糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.4.20

社長インタビュー

マル勝髙田商店のメディア「糸」の最初のコンテンツとして、
髙田勝一社長にうかがったお話を用意しました。

今回は、そうめんの持つ可能性、ポテンシャルについて。
こんな「そうめん論」、ちょっとほかでは聞けませんよ。

(聞き手:「糸」編集部)

第2回 そうめんのポテンシャル

そうめんは、どういった理由でお客様に選ばれると思われますか?

「そうめんって、そうめんを食べたくて食べていると言うより、
『簡便』、楽だからでしょう。
だけど今はもっと簡便な商品が出てきましたが。
あと、お中元にもよく用いられましたが、商品の選択肢が増えた上、
贈ること自体もやめるところが多くなってきましたね」

お中元はこの1、2年のコロナで一気に廃れましたね

「でしょう?
儀礼みたいなものはどんどん変わっていって、需要が減っています。
夏の涼味としてのポジションもそうです。
空調がこれだけ普及して、エアコンをガンガンかけた涼しい部屋の中で
冷たいそうめんを食べたら寒いですよね。
ほかに冷たくて美味しい食品もどんどん増えてきました。

環境や時代の変化にも対応しないといけませんね

「そうですね。
今年の夏の企画は、去年の夏を振り返って考えたらうまくいきません。
今年の夏は去年の夏と違いますから。
東京オリンピックは終わったし、
天候も全く同じではないですよね。
いろいろな要因を検討して、
次の夏を予測して提案しないと成功しないでしょう。
変化に対応できなかったら生き残れませんし、
対応するだけだと発展しません。
その先には変化を起こせる会社にしていかないといけないんですよ。
次の段階は、僕らが業界に変化を起こせる会社になっていかないと」

対応するだけではなく起こしていくのですね

「じゃあ、次は?ですよね。
汎用性を軸に、そうめんの使い方はどんどん変わっていくんじゃないかな。
僕らが次の世代につないでいくためには、
そうめんに汎用性があることを
お客様に認知していただかないといけない。
そうめんは、モノ自体のポテンシャルが極めて高いわけですから」

そうめんのポテンシャル、そう考えるとたしかに高いですね

「モノ自体も進化させていかなければならないと思います。
原料にこだわったり、製法にこだわったり、
同時に使い方も新しい価値提供をしていかなければなりません」

そうめんを次へとつないでいくためには、どういったことが必要とお考えですか?

「今までそうめんに対してそんなに関心がなかった新規顧客の開拓です。
たとえば、市販のお餅にいつからかスリットが入りましたよね。
今までお餅をお買い求めになっていた方は嬉しいでしょう。
僕らもそうめんに同じことをしていたと思うんです。
パッケージのデザインを変えたり、
保存しやすいようにファスナーを付けたりとか。
それは、すでにご愛用いただいているお客様に対しての改良でしょう。
お年を召した方のために少量パックを作るのも同じことで。
そもそも、そうめんを召し上がらなかった方に、
そんな改良で手に取っていただけるとはちょっと考えにくい。
いっぽう、たとえば高級食パンなんかは、
今まで食パンに関心のなかったお客様でも
『食べてみたい』と思うわけです。
そうめんもそう思ってもらえるようにならないと」

どのようにして?

「うちの社是もそうなんですが、
『弊社は進化し続けることで伝統を革新する。今日と変わらぬ明日のために』。
世の中が変化する中で今日と変わらない明日を迎えようとするなら、
自分が昨日、今日と同じままではなかなか難しいでしょう。
日々変わって、進化し続けなければ」

進化とは、たとえばどのようなことですか?

「うちには、そうめん以外に新しいものを生み出すという発想はあまりないんです。
だから、そうめんとこれを一緒に食べたら美味しいんじゃないかとか、
こういう形にアレンジしたら面白いんじゃないかとか。
そうめんという伝統的なものを進化させ、革新していくことで、
この先もずっと召し上がっていただけるんじゃないか…。
というのが僕の発想なんです。
昔から変わらない冷やしそうめんもいいですけれど、
僕にできることというのは、
『今日と変わらない明日を迎えるために、そうめんも進化させていく』
ということかなと思うんです」

マル勝髙田商店が目指している姿は、どのようなものでしょう

「僕はいつも、モノじゃなくて新しいコトを作りたいんです。
『新しい、そうめんのコト』
そうめんで新しいモノを出しても、
お客様にはなかなか広がらないでしょう。
ですが、新しいコトを提案すると、
今までそうめんを召し上がらなかった方にも
興味をもっていただけると考えています。
たとえば、コーヒー豆を挽いたらプロダクトになる。
それを淹れたらサービスになる。
スターバックスまで行ったらエクスペリエンス(体験)です。
うちもエクスペリエンスを売れる会社にしようと。
それで弊社直営店のてのべたかだやでは
エクスペリエンス(体験)をご提供するコトをコンセプトにしました。
店舗は木造で、店内にはダシの香りが漂い、
心地良い音楽、インテリアにもこだわって
五感で感じていただけるようにしています。
販売する商品も13種類のてのべ麺をご用意し、
お好みの麺を選んで頂けるようになっています」

お客層も変わってきましたか?

「てのべたかだやを見ると、
若いカップルや女子、ママ友会のママさんがいらっしゃいます。
昔なら年配の方だけでしたから。
お客層がすごく広がってきましたね」

お客様に新しい価値を感じてもらうことが大事ですね

「僕はどこかそうめんに対して無責任に客観的なところがあって、
自分だったら、それでお店に食べに行くだろうか、
買うだろうかと考えるんです。
結果、どこにでもあるそうめんならたぶん買わないと思うんです。
だから、いろんなことを変えていかないといけない。
ただ、そうめん自体は基本的に変わりません。
製法や原料にこだわりはしても、
そのものは大きくは変化できないと思います。
ですが、新しい提案をして用途や食べ方を変えていったら、
今日と変わらない明日を迎えられるんじゃないかと。
いや、もう本当にこのままでは、
明日が来ないんじゃないかと不安になることがあるんですよ(笑)」

(第2回終わり)