糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.4.6

社長インタビュー

マル勝髙田商店のメディア「糸」の最初のコンテンツとして、
髙田勝一社長にうかがったお話を用意しました。
会社が船であるならば「船長」である髙田社長。
今、どんな考えで舵を取り、どこへ向かおうとしているのか。
社長室のリラックスした雰囲気の中、じっくり語っていただきました。
とても充実した内容なので、何回かに分けてお送りします。

まず第1回は、社長のそうめんに対する思いやこだわり
についてうかがいます。

(聞き手:「糸」編集部)

第1回 いつまでも「夏の風物詩」でいいの?

社長は奈良の、この地で生まれ育ったのですか?

「そうです。高校、大学は大阪に出ましたが」

奈良というと古都、歴史と伝統ですよね

「良くも悪くも変わらない場所ですね。
僕は特別に新しいもの好きではないですけれど、
ものごとは一回経験したら次は感動がないじゃないですか。
たとえば飲食店なら、次は違うものが食べてみたいとか、
どうせ行くなら違うところに行きたいとか、
そんな性格ではあると思います」

学生時代、どんな夢をお持ちでしたか?

「パイロットになりたかったんです。
ブルーインパルスに入りたかったんですよ。
高校入試のときに父にそう言ったら『アカン!』とえらい怒られました(笑)」

ご自身は、どのような性格と自己分析されますか?

「いろんなものに対して疑問をもってしまう、というのはありますね。
今も、業界の慣習であったり、いろいろと抗っているような気もします。
自分でもしんどいなあと思ってはいるんですが(笑)」

その思いはそうめんにも?

「未来永劫皆さんにそうめんを召し上がっていただこうとすると、
今までと同じままでは難しいと思うんです。
ずっと、そうめんは夏のもので、
毎年、薬味はねぎとしょうがというワンパターンだと、
だんだん消費量は減っていくと思います。
そこをやはり、違う形に変えていかないといけません」

確かにそうめんといえば夏、というイメージがあります

「そうですよね。
それを変えていかないといけないと、
ずっと言い続けてきたんですよ。
でも、これまでメニュー提案などをしても、
売り場を見たら、やっぱり夏の風物詩的なものしか
ありませんでした。
秋や冬もそうめんを、と言い続けてきて
『こうやって召し上がってみて下さい』と提案しても、
『そうは言うけど…』と本心ではみんな思っていたんです。
何だかんだ言って、そうめんといえばやっぱり夏、
薬味はねぎ、しょうがが一番旨いと
ずっと言われ続けてきたわけですから。
けれども、直営店の「てのべたかだや」で
オリジナルのそうめんを召し上がって、
時期を問わず『わっ、これ美味しい!』
と、おっしゃって下さるお客様の存在がある。
季節商材じゃなくても食材として売れる可能性があるわけです」

夏だけではない、そうめんのあり方ですね

じゃあ、そうめんを通してお客様に何をどうやって
価値提供したらいいだろうと、
ずうっと考えてきました。
そうめんでないといけないのは、何なのかと。
自分だったらどうやって食べたいだろうと考えたときに、
その考えが「てのべたかだや」へとつながったたんですよ。
ダシとかスープとか、旨味とか、
日本食は世界遺産に認定されるくらい認知されています。
ダシを売る店が百貨店に出店しているくらいです。
そのダシをいかして極力少ない調味料で食べられる手段というと、
そうめんが最適じゃないかと思うんです。
味がたんぱくで麺線の細いそうめんは、
いちばんダシを感じてもらいやすい食材なんですよ」

そういう見方をしたことはありませんでした

「だから、てのべたかだやは
ダシを楽しんでもらえるお店にしたかったんです。
つゆやスープは、最後まで飲み干してもらえるように
薄味にしています。
それは、そうめんにしかできないだろうなと。
カレーもあるんですけど、がっつりカレーじゃなく。
最初は『薄っ』と思うんですけど、
でも最後まで飲んだら『これはそうめんじゃないと無理だな』と
思っていただけるはずです。
これがお客様に認知されて、
家で鍋をした後などに、
ダシがもったいない、じゃあそうめんを入れて食べようか、
となったら僕はすごく嬉しい。
おでんの汁も残ったら捨てるじゃないですか。
あそこにそうめんを入れて食べても美味しいんですよ。
それって簡便でしょう?
もともと簡便だったのを感じていなかったこともあるけれど、
そうめんは、いろいろなダシに対する汎用性もあるんです」

簡便性と汎用性、ですね

「それにお客様が気付いてくれたら嬉しいですね。
いろんなものにそうめんは合うんです。
今後はパスタに替われるかもしれないし、
冷凍うどんに替われるかもしれない。
そうすれば、1200年前からあるそうめんは、
これからもずっと続くと思うんです。
そうめんの使い方は時代によって変わってきています。
もともとは、宮廷のお供えものから始まって、
江戸時代に庶民の食べ物になって、
大正くらいからお中元や贈答品になり、
昭和になってからは夏の風物詩になって
その上に今がありますから」

(第1回終わり)