糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.4.20

奈良のソウルフード“おみい”をめぐる冒険

先日、「糸」の編集会議の中で髙田社長がふと、奈良には「みい」という食べ物があると言ったんです。雑談の中でポロっと。
なんでも、温かいそうめんにごはんを入れた家庭料理なのだとか。すると、同席していたデザイン会社のスタッフさんが「僕の田舎は徳島県なんですが、徳島でも同じような食べ物を見たことがあります」と言うではないですか。
自宅に帰って検索してみると「みい」または「おみい」「おみいさん」は奈良、徳島、それと東大阪の郷土食として親しまれていることが分かりました。
これは面白い!ちょっとした風土記になるかもと思い、この料理について調べた結果を前後編に分けてレポートします。
(記事:「糸」編集部M)

郷土食の「みい」ってどんな食べ物?

たった2文字の名称だけでは、さっぱり想像がつかない謎の食べ物「みい」(笑)

「みい」「おみい」「おみ」とは、「そうめん入りの味噌雑炊」のこと。
奈良県の三輪地域ではご飯と同じくらいそうめんが食卓に並びます。それだけに「冷やご飯」ならぬ「冷やそうめん(元来そうめんは冷たいものですが 笑)」が残るのも日常茶飯事。
そのため、人参やダイコン、ゴボウなどのお野菜とそうめんをいっしょに煮込んだ、味噌味の雑炊「みそうず」が昔から食べられてきたのです。

誕生はなんと、室町時代!

ご自身も生粋の奈良県人であり、奈良県調理技能協会会長を務めていた田中敏子さんの著書『大和の味 改訂版』によると、味噌雑炊を「みそうず」または「おみそうず」と呼んでいたものが簡略化され「おみい」となったのがはじまりなんだとか。

そもそも「みそうず」の歴史はとても古く、室町時代にまで遡ります。
この時代は「味噌汁」が広まったこともあり、室町幕府を開いた将軍足利家では、お正月には七種類のみそうずを祝い膳として用意していたそうです。
その習慣がいつしか町衆にも広まり、これが現在も親しまれている「七草粥」の原型と言われています。
まさか「おみいさん」が足利将軍に辿り着くとは驚きです。
(参照:http://www.eihosha.com/tabemono/page4.html

そうめんの産地にある「おみい」

また、東吉野村教育委員会編の『ふるさとの味 東吉野』の文中にも

“「おみ」は昔から米を節約し、しかも栄養価が高く体があたたまる主食としてどの家庭でも重宝がられた食事である。先祖の生活の知恵として、なつかしいふるさとの味を残すもの”

との記述があることから、奈良県では昔から広く食べられてきた郷土食であることは間違いなさそう。
もちろん、前述のデザイン会社の方もご存知だったことから、奈良県に限らず播州、小豆島、徳島などの「そうめんの地」ではポピュラーな食べ物なのかもしれません。

ちなみにこれは某編集スタッフがネットに出ていたレシピを参考にした自作「おみい」。感想は「見栄を張ってホタテなんか入れたら、そっちのダシが出てちょっと辛くなった」とのこと(笑)

(後編に続く)