糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.5.23

マル勝博物館

この企画は、マル勝の中にあるいろいろな「モノ」にスポットを当て、
その「いわれ」や「おしえ」を探ります。
(記事:「糸」編集部M)

第2回 オフィス前の錆びた看板

マル勝髙田商店社屋の事務所入り口前。石段の脇に、一枚の立て看板があります。
それは遠目からでは茶色い一枚板のように見えますが、近づいてみると茶色いのは“錆びている”から、と気づきます。
鉄製の看板は「マル勝髙田商店」「てのべたかだや」「Elisir d'Italia」それぞれのロゴが描かれたシンプルなもの。それだけに、余計に赤錆が際立っています。
ガラス張りで真新しいスマートなデザインの建物の前に、どうして赤錆びた看板が?
もしかしたら、建替え前の社屋にあった昔の鉄板を使っているのかも。
会社を一新する中で、昔の記憶も大切にしたいという思いの象徴では…?

髙田社長に聞いたところ、そうではないようです。もちろん、この看板は社長自身のアイデアだそうですが、「経年変化を楽しもう」と考えて設置したのだとか。
なるほど、ものごとは、時間の経過とともに変化します。お酒などは時間とともに味わいが深くなりますが、そういった効果を狙ったのかもしれません。

実は、この錆びた看板以外にも、マル勝髙田商店には「時間の流れ」を楽しむ工夫が施されています。

マル勝の社屋の周囲には、一面のガラス窓に沿うようにして植栽がなされています。
これも、いずれ木々が生い茂り、雑木林のようになればいいと考えてのこと。
今はまだ木々は若く、ようやく人間の背丈を超えたくらいですが、自然に成長した雑木林が会社を「森」のようにすっぽりと包む日を待ち望んでいるのだそうです。

髙田社長は、「森の中で仕事をしているような会社にしたい」と語ってくれました。
その日には、オフィスの窓の向こうに三輪山が木々の間からのぞき、とても心地よい環境で仕事ができそうですね。

髙田社長の話を伺っていると、しばしば「変化」という言葉が登場します。
時間の流れの中で自然に起こる「変化」、自らの意志で起こす「変化」。
いずれの変化に対しても、髙田社長は「楽しむ」ことを大切にしているのが印象的でした。