糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.4.6

マル勝博物館

マル勝髙田商店の社内にあるいろいろな「モノ」。
歴史を語るモノもあれば、分かる人にしか分からないモノもちらほら。
その一つひとつが、マル勝らしさに溢れているように思えます。
この企画は、マル勝の中にあるいろいろな「モノ」にスポットを当て、
その「いわれ」や「おしえ」を探ります。
(記事:「糸」編集部M)

第1回 バチカンからの手紙

新社屋2階の社長室の書棚に、プレートに入れられた手紙が飾られています。
髙田社長のお名前がローマ字で記されていますが、文面は英語ではないような…。
お聞きすると、なんとこの手紙はバチカンの教皇公邸管理局からのものだそう。
翻訳すると、

“サンマルコ広場で下記日程、教皇フランチェスコが行う定例ミサに参加する許可証
2014年4月23日(水) 10時30分”。


とのこと。
そう、髙田社長はローマ法王に謁見したことがあり、その際に直接「三輪の神糸」を献上したのです。当時、このことは新聞やテレビでも報じられ、けっこう話題になりました。
ちなみに、このとき献上された「三輪の神糸」は国内産の最高の桐材の箱に収められ、掛けられた和紙は手すきの「吉野紙」、そこに奈良県出身でカンヌ国際映画祭などでの輝かしい受賞歴を持つ映画監督・河瀨直美氏が揮毫した、いわば「奈良づくし」の逸品でした。

さて、ここまで読んでくださった方は「なぜ奈良のそうめん会社がローマ法王に謁見したの?」と思ったのではないでしょうか。

マル勝髙田商店は、もともとビジネスマッチングを兼ねたイタリアでの交流イベントに参加しており、ミラノで開催されるファッションショーのレセプションで「そうめん料理」を出したこともあります。マル勝はそうめんの製造工程でイタリア産のオリーブオイルを使用していますが、マル勝商品のネッタリブレオもイタリアの契約農家で生産を委託しているオリーブオイル。イタリアのシェフと手延べそうめんのメニュー開発を行ったこともあり、髙田社長はこれまで幾度もイタリアに出張しているなど、マル勝とイタリアは実はとても近い関係にあるのです。そして、手延べそうめんが切れることなく一本の糸を紡いでいくように、マル勝とイタリアとの関係もまた切れることなく続いています。

ローマ法王への謁見は、ミラノの日本人カトリック教会のルチアーノ神父の仲介で実現しました。神父は、三輪そうめんが大神神社という「神様」の存在を背景に持ち、飢饉の際に人々を救ったという逸話、さらにはそうめん作りにオリーブオイルを使用するマル勝の革新的な技法にたいへん感動され、法王へのそうめんの献上をお薦めしてくれたのだそうです。

テレビ番組などで「世界最小の国」と紹介されることもあるバチカン。それをご存じの方は、「バチカンとイタリアは別の国じゃないの?」と思ったかも。
はい、バチカン、正しくはバチカン市国は一つの独立国家です。けれども、ローマ市内にあってパスポートなどなくても自由に出入りでき、Wikipediaでも「イメージとしては街中にある教会堂とその敷地に近い」とあるように、現地ではローマの一部のような感覚だそうです。

髙田社長は実際にバチカンに到着するまで、ずっと不安だったとか。「本当にローマ法王に会えるのだろうか」と。無理もありません。なにしろ、ミサの参加許可証が届いていたとはいえ、行先はキリスト教の総本山、相手はテレビの中でしかお見掛けすることのないローマカトリック教会の最高司祭「ローマ法王」なのですから。

パスタ好きともいわれるローマ法王は「三輪の神糸」を受け取ると、「パスタ・ジャポネーゼ(日本のパスタ)」と顔をほころばせたとか。側近の方は「法王は(そうめんを)トマトソースで召し上がるのでは」とおっしゃったそうですが、その感想も聞いてみたいですね。当時の新聞によると、髙田社長の法王の印象は、「優しさが身体からにじみ出ておられた」とのことです。

バチカンからの手紙は、先述のミラノの教会に届いたもので、謁見後に記念にいただいたそうです。プレートにかかっているロザリオは、ミサに参加した人にバチカンから贈られたものだとか。

ローマ法王にそうめんを献上したという「歴史的な出来事」の証人でもあるバチカンからの手紙は、今日も社長室でお客様をお迎えしています。

Google Mapから引用