糸-ito-

マル勝髙田商店が伝えたい、そうめんのこと、私たちのこと

2022.4.6

明日の実験室

~新しい社屋から見えるもの~

2020年、マル勝髙田商店の新しい社屋が完成しました。
そうめん製造という伝統産業にはおよそ似つかわしくないモダンなデザイン。
建物のところどころに見られる工夫、こだわり、遊び心。
グッドデザイン賞をはじめいくつもの表彰をいただいているこの建物ですが、
私たちにとってどのような意味があるのか、3つの視点からご紹介します。
ようこそ、私たちの新社屋へ。
(記事:「糸」編集部H)

視点1.ラボ(実験室)

髙田勝一社長が新社屋を語る際に必ず口にする言葉が、「僕はラボ(実験室)を作りたかったんです」。
私たちは、1200年前からあるそうめんという食べ物をこの先もずっと多くの方にご愛用いただけるように、「伝統を革新すること」をテーマに掲げています。
そのためには、原料や製法にこだわるのはもちろん、そうめんと何かを組み合わせて、あるいはアレンジして、新しい価値を提案することが必要になります。
新社屋は、そんな新鮮な発想が生まれる「ラボ」というわけです。

新社屋のラボとしての「仕掛け」の一部をご紹介しましょう。
まず、広々としたオフィス空間。仕切りや壁がない大部屋なのは、スタッフが一体感を持てることを意図としていますが、全員がお互い何をしているかを共有しやすいように、業務効率上の「見える化」も兼ねています。

スタッフの席は、「どこに座っても良い」フリーアドレススタイル。
自由な発想を促進するために、あえて「定位置」は設定していません。必要があれば、何人かがラウンドテーブルに集まってミーティングを行えます。個性のぶつかりあいが化学反応を起こせば、予想もしなかったひらめきをもたらすかも。

オフィススペースは、南側の壁一面がガラス張りです。
実験室というと窓のない暗い部屋を想像しがちですが、新社屋からはそうめん発祥の地である三輪の町や遠くの山の稜線、大神神社の大鳥居がのぞめるなど、四季のうつろいが感じられます。
食べ物が季節と深く関係していることは言うまでもありませんが、常に自然が目に入るオフィスは、そうめんという食を考えるうえで最適な環境ではないかと思うのです。

新社屋には店舗「てのべたかだや」が併設されています。伝統的な産業としては、この店舗そのものが実験と言えるでしょう。
ここでは、お客様にどこにもない新しいそうめんのメニューを味わっていただけるだけでなく、五感で楽しんでいただけるエクスペリエンス(体験)も提供しています。
店舗でお客様と直接触れ合えるのも大きなメリット。お客様の声は、発想のヒントが隠れている宝の山ですから。

社会も文化もビジネスも、日々変化しています。それらの変化をキャッチしながら、ここで私たちは発想と挑戦の「実験」を繰り返しています。

視点2.「変化」のシンボル

「変わる」というキーワードは、企業において珍しいものではなく、むしろ、もはや手あかがついた言葉とすら言えるかもしれません。そのくらい、現代の企業において「変わる」は共通のテーマなのだと思います。

髙田社長も就任以来、ことあるごとに「改革」を強調してきました。
自分たちはこの市場を改革していかなければならない。市場を改革するためには、環境を変えないといけない。そして何より、自分たちの意識を変えていかなければいけない。意識が変わらなければ新しい発想なんて出てこない、と。
とはいえ、そうめんを扱うことは変わらないし、お得意先も変わらない。そんな中で私たちは、変わることに対して強い確信が持てなかったのが正直なところでした。
そこに、新社屋の完成。
まさに具体的な「変化」が目の前に現れて、皆「こういうことか」と会社が目指すものを一瞬で理解したのでした。
新社屋は各方面からご注目をいただき、マスコミにもしばしば取り上げられ、斬新な建築デザインはさまざまな表彰をいただきました。

店舗にはこれまで当社と縁がなかったような若いお客様がご来店下さり、その方々が発信されたSNSの情報をご覧になって、また別の方が訪れるという現象も起こっています。
これも、新社屋がもたらした変化です。
そうなると、私たちも変わることに対して勇気が湧きます。
新社屋は、「伝統を革新する」という私たちのテーマのシンボルであり、向かう方向の目印であり、背中を押してくれる力強い存在でもあります。

視点3.みんなの「家」

髙田社長は、新社屋を考えたとき、まず自分が働きたい環境をイメージしたそうです。
たとえば、きれいでお洒落なオフィスならモチベーションも上がるはず。社屋は会社の顔でもあるので、外部の方に好印象を与えるものでもあるべきだろうと。
しかし忘れてはならないのは、ここで働く私たちがいきいきと働き、くつろぎ、憩う「家」のような場であること。そこで社長は「アットホームな雰囲気は残してください」と設計士さんに依頼したのだとか。

ふんだんに木材が使われている建物を見ると、あまり「会社」という感じはしません。
オフィスにありがちな向かい合わせのデスクもないので、本当に大きな家にいるような気持ちになります。

木といえば、社屋に並ぶように植えられた木々はまだ樹齢が浅く、会社と一緒に成長していくことを想定しています。これらが何年か後には森のようになって、国道から見える風景を変えるかもしれません。

私たちの新社屋は、経年の変化を楽しもうとしています。常に私たちの場所としてそこにあり、私たちといっしょに年を取る。そんな場所はやはり、オフィスというより「家」に近いのではないでしょうか。

いかがでしたか?
オフィスは一般には非公開ですが、店舗は9:00~17:00まで営業しています。ぜひご来店いただき、私たちの新しい試みをご覧になってください(水曜日、および年末年始定休)。